藤花幻:神様に愛された男

「短編」
ショートショート

神様に愛された男

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 運転手は毎日神棚に祈っていた。おかげで彼はついていた。生まれてこの方無事故無違反、怪我一つとして無い。
 例えば、高速道路で玉突き事故が起きた時、事故の真ん中にいたのに彼の車には傷一つ付かなかった。大勢が死亡した事故に巻き込まれた時も彼一人だけが怪我一つせず無事だった。台風の日、大きな看板が飛ばされて来た時も、たまたま割り込んで来た自動車が身代わりでぺしゃんこになったし、飲酒運転のネズミ取りも、嫌な仕事の当番のクジも、無作為抽出の抜き打ち検査も当たった事が無かった。
 彼はとにかくついていた。
 一方、彼は大の宝くじファンだったが、こっちの方はからっきしで、今までただの一度も当たった事が無い。10枚買えば必ず一枚は末等が入っているものだが、彼が買うと何故かそれすら入っていない。それが一回だけなら諦めもするが、何回買っても幾ら買っても当たらないとなれば、彼も首をひねるばかりだ。
「私は運が良い筈なのに。」
 男は今日も神棚に祈った。すると、突然老人が現れた。
「私は神様です。あなたはいつもお祈りを欠かさない大変素晴らしい人だ。私はあなたをいつも見守っている。私に総て任せれば安泰だよ。」
「ありがとうございます」
 彼は大変喜んで深々と頭を下げた。頭を上げると既に神様は居なくなっていた。
「そうか、神様に総て任せればいいのか。」
 彼は貯金を総てはたいて宝くじを買った。
「今度こそ当たるだろう。」
 だが結果は惨憺たるものだった。男は項垂れて神棚に向かった。
「あなたは何故私に幸運を下さらないのですか。あなたには失望しましたよ。」
 すると神様が困惑した表情で現れた。
「何故失望するのか。私はあなたにちゃんと幸運をもたらしているではないか。」
「何が幸運ですか。これだけ宝くじを買ったというのに、全然当たらないどころか、かすりもしないじゃないですか。」
 神様は黙ってしまった。
 すると、突然隣に若い女性が現れた。
「それは無理ですよ。その神様は交通安全の神様ですから、当たらないのが信条です。ところで私も神様ですが、私なら幾らでも当ててあげられますから、この際宗旨替えしてはいかが?」
「ええ?当ててくれるんですか。なら早速そうしますよ。」
「それじゃ契約成立ですね。そのハズレくじを見てごらんなさい。」
 彼は女神の言葉に促されてハズレくじを見た。すると総て当たっているではないか。
「凄い!あなたは素晴らしい神様だ。感謝します。ところで、あなたは何の神様ですか?」
 すると女神はにこっと笑った。
「交通事故の女神ですわ。」
 直後、大型トラックが飛び込んできた。

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~ Comment ~

ニヤニヤと

miss.keiさん、こんにちは♪

こちらにある5話のショートショートを先日読ませていただきました。

どの作品も、最後まで読み進めると、( ̄∀ ̄)←こんな顔になってしまうほどブラックユーモアを感じさせてくれる短編で、本当に愉しませていただきましたよ。

特に好きだったのが、選ぶのも難しいのですが、こちらの「神様に愛された男」かな?
最後のオチがすっごく効けてて、笑いと寒気を同時に感じさせてもらいました。
miss.keiさんは長編だけでなく、短いお話でも転がしていくのが本当にお上手ですよね。

というところで、そろそろファンタジー長編小説の続きが出ないだろうかと待ち焦がれているのですがいかがなものでしょう?←(読者は鬼なんですよ、はい……笑)
すっごくすっごく楽しみにしていますので、どうかがんばってくださいね♪←(にっこり笑って再度催促する鬼……笑)

ってなところで、おあとがよろしいようで。今回も素敵な小説を読ませていただき本当にありがとうございました(*^_^*)

三宅千鶴様へ

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 ショートショートは星新一さんの「おせっかいな神々」のイメージでやってますので、基本どえらい迷惑な神様が真面目にボケかましてます。でも滅多にアイデアが浮かばないんですよね。悲しいかな。形にならなくて放置されている作品なら幾つかあるのですが、その内何とかなりますかねぇ。
 お褒め頂き恐縮ですが、上手だなんてとんでもない。ほんと文才の無さに自分でがっかりなんですわ。どうしても似たような言い回しの使いまわしになってまして、しかも執筆がブツ切れなものですから、文体が大変不安定です。いつもなんか違う感が漂ってまして、弁慶七戻りしちゃうんですよ。
 とは言え、いい加減続きを何とかしたいと思います。はよ次書けやとせっつかれるなんて初めての経験です。何か感動してしまいますわ(笑い

上手い!

6話の中で一番好きですね。

思わず「上手い!」と口にしていました。

「当たる」をキーワードに、まるで名作の落語のようです。

落とし方もよかったです。

尾道貴志様へ

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 良い方にはなかなか当たらんもんですな。わたし、ロトもトトもトトロも当たった事が有りません。みーんなスカです。一度位当たってみたいなという願望に、そんなに上手く行くわきゃ無いと冷めた自分が冷や水ぶっかける訳ですよ。
 でも良いじゃないか妄想くらい。
  妄想に浸ってる時間が有るなら努力しろ。
 努力してるじゃまいか。毎回買ってる。
  ・・・あほが。
 葛藤であります。

人生とはついてる時はわからないもの。

よく大金を稼ぐ人間は後でなんらかの形で不幸になったりしますよね。自分でなくても身近な人に不幸が襲ったりとかね。
こういう人は実力もあるし、努力もしてるでしょうが、運も作用しますからね。

交通安全の神様は宝くじは当てられないでしょ。
私も宝くじの神様と言われるところに祈願に行った事あります。
有名なのは佐賀の唐津の宝当神社。もう三回も行ってます。
一昔前は熊本、阿蘇の福の神地蔵。
宝くじはあまり当たった試しはないですな。

私は宝くじ当選の他の事も祈ったりもします。自分や家族、友人の健康とかもね。

想馬涼生様へ

 こんにちは。コメントありがとうございます。
 人間何が幸運で何が不運なのか、本当にわからないものです。後になって、あれはこうだったんだなぁと思うんでしょうな。
 クジの神様がいたら凄いでしょうな。もう毎日満員御礼。ただし、出入り口には救急車が常に待機かもしれません(笑
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